かく
4月10日付のジャパンニュースに、「メッセージの65%は言語以外で伝えている!」という記事がありました。
「美味しい!」と言いながらも、不味そうな顔をしていたり、食べ残しているのなら、これは「おいしくない!」というメッセージ。
「言葉で嘘をつくのは簡単だけど、非言語で嘘をつくのは、なかなか難しい」といった内容に、なるほど~、と頷きました。
言葉が紙という媒体に書かれている以上、どうしても授業中は、正しい文法の活用といったテクニカルな部分を重んじてしまいがちになります。
私にとって、この記事は良い警鐘となりました。
数日後、それを更に上塗りする「メッセージの99%は言語以外で伝えている!」とさえ感じてしまう出来事がありました。
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先日、正月に帰省できなかった実家に顔を出しました。ちょうど、姪っ子が遊びに来ていたからです。1年ぶりの対面となりました。
ハイハイさえしていなかったのに、目の前をよちよち歩いている・・感慨深いものがあります。
そんな中、
棚の上の「紙とペン」を指さして、「かく~」と一言。
―書く(描く)―
五段活用の終止形
本来、単独で用いることはほとんどありません。うどんで言えば「素うどん」。しかし彼女の表情や目力で、「かく~」は、立派な「天ぷら月見うどん ネギ大盛り」になっていました。
彼女の「かく~」を、通訳するならば、
「あの棚の上にある紙とペンを使って、私は何か描きたいと思っているの。でも、残念ながら手が届かないの。だから取ってちょうだい!」
となります。
案の定、取ってあげると、嬉しそうに「かく~」と言いながら、紙の上でペンを滑らせていました。
ここでの「かく~」は、もちろん最初の「かく~」とは、違った意味合いでしょう。
おそらくここでは、
「描くのが楽しいー!」
といった意思表示になりそうです。単なる
「イエ―イ!」
かもしれません。
幼児とは、「言語以外で99%を伝える魔法使い」。そう確信しました。
今からちょっぴり寂しく感じるのは、おそらく次回会った時には、この魔法の終止形「書く(描く)」が、もう耳にできないことです。
日に日に自然と活用形を吸収していくことで、言葉のバリエーションが膨らんでしまうからです。
とは言え、近い将来「かく~」を未然形にして、「ねえ、一緒に描こ(う)!」なんて、魔法使いから脱皮した彼女から言われたら、もう溶けてしまいますね。もしかして、命令形になって「おい、なんか描け!」と言われて凍っていたりして・・。
1つの命が与えてくれる幸福感は、無尽蔵です。
*熊本県を中心とする九州地方で発生した地震に見舞われた被災者の皆様に、心よりお見舞い申し上げます。一日でも早く安寧の日々が戻りますことを、心よりお祈り申し上げます。
ジャムスクール武蔵境