まあ、いいか~。
「最後の最後まで、全力を尽くすんだ!」
塾講師というのは、大人に向かって言えない恥ずかしいセリフを、白昼堂々、子どもに向かって言っています。
つまり、変人です。
おまけに、家では「全力を“尽くさない”生活」だったりします。
「あっ、ゴミの収集車が来ている!急げば間に合うけど、まあ、いいか~。」
「あっ、シャンプーがない!まあ、(石鹸でも)いいか~。」
少なくとも、私はこんな感じです。教室でも私生活でも、限りなく全力を尽くせるような人は、間違いなく本物の変人か、当塾の猿人だけです。
しかし、私のような人間でも、夏期講習の期間だけは、きちんと全力を尽くした私生活を送るようにしています。
そうしないと、間違いなく授業に支障が出てしまうからです。
「眠れないよ~!まあ、いいか~。」
これですと、翌日の授業中に、確実に寝落ちしてしまいます。
「眠れないだと?最後の最後まで、全力で眠れーーっっ!しっかり目を閉じろーーーっっ!!」
毎晩、あの松岡修造氏に、枕元で叫ばれているような気がしました。
私にとって、夏期講習とは「まあ、いいか~。」が許されない期間。常識的な大人として生きる、サバイバルな1カ月間なのです。
そんな期間の終わりを告げるのが、8月31日。
☆ ☆ ☆
最終コマの授業が終わり、
「明日から元の世界か~!」
「さあ、待ちに待った夏のビールを堪能するぞ~!」
そんなことを思いめぐらせながら、私は教室の後片付けをしていました。
最後に戸締りをしてドアの外へ出た時、私を待っていたのは、予想外の気温の低さでした。
「これじゃ、ビールの美味しさが半減だよ~。」
そう思った矢先、
三日前の猛暑を、まるで三か月前の出来事と錯覚させるような、ひんやりとした風が私の背中をさすっていきました。
疲労した体が、一足早い秋風に、スッと優しく包まれていくのを感じました。
「秋のビールでも、まあ、いいか~。」
足取り軽く、教室を後にしました。
さあ、新学期のスタートです。実りの秋となりますように。