二足の草鞋(2)
(前回の続きとなります)
全国大会出場が決まって以降、言うまでもなく、部活の練習は激しさを増していったはずです。
しかし彼は、その後も変わることなく“いつもの時間”に姿を見せ、勉強を始めていました。
もはや単なる「部活と勉強の両立」を超える異次元の両立だったと思われます。でも、愚痴ひとつ言わずに勉強時間を絞り出し、授業に臨んでいました。
そんな二足の草鞋を履く彼を見て、私は「大したもんだなあ~」と感心するばかり。
授業中には、全国大会の話もしました。もし準々決勝まで勝ち進むことができたら、前年度の準優勝校と対戦できるという話を聞き、
「そうなったら、マジですごいね!」なんて驚いた覚えがあります。
入試までの3週間弱のラストスパートは、あっという間に過ぎ去りました。
☆ ☆ ☆
入試に挑んだ一週間後、
彼から届いたメールは、待ち望んでいた吉報でした。
嬉しいことに、合格したその日のうちに、わざわざ教室に挨拶にきてくれました。もちろん猛練習をしてきた後に立ち寄ってくれたのでしょう。“いつもの時間帯”でした。
そして…
その日を境に、夜9時半に教室の自動ドアが開くことはなくなりました。
次に彼の姿を見たのは、1月の冬期講習中のこと。テレビ画面の中でした。(続く)