ゾルバとの再会(2)
前回の続きになります。
それでは「ゾルバ」ついて説明いたします。
2019年3月、開校6周年を迎えた時のブログで、以下のようなことをお伝えしました。
中2の英語教科書 New Crownには「Zorba’s Promise(ゾルバの約束)」という物語が登場します。
これは「カモメに飛ぶことを教えた猫」という原作の本が、4ページに短縮されたものです。
素晴らしい内容で、ラストシーンに関しては、音読するたびに涙腺が決壊しそうになります(生徒にバレないように、必死にごまかしています)。
教科書の巻末に付録として掲載されているので、この授業を終えると「今年度も終わりかあ~」という気持ちに包まれます。
この物語の中で、黒猫のゾルバが自分の子どものように育てたカモメに言ったセリフ、
「Cats do cat things. Gulls do gull things.(猫には猫のやるべきことがあり、カモメにはカモメのやるべきことがある。)」
これはさり気なく哲学的で「生きることについての問い」だと思えますし、その後に続くセリフ、
「Each is different. Each is good.(みんなちがって、みんないい)」
これなんて「金子みすヾ」の詩ですか?と思えてしまうほど。
私はこの物語を愛して止まないのですが、毎年生徒たちの反応は、
「まあまあかな。」と、ごくあっさり。
自分の感覚がずれているのか?と不安にも感じていました。
だから、原作の「カモメに飛ぶことを教えた猫」が、2019年4月から「劇団四季」によって全国公演されると知った時は、思わずガッツポーズでした。
残念ながら、「劇団四季」による公演は、2020年3月の千秋楽を迎えることなく、2月で旅を終えてしまいました。
もちろん、コロナの影響によります。
劇団四季だけでなく、一介の塾講師の私も、ゾルバという千秋楽を迎えることなく、新年度を迎えてしまいました。
昨年のちょうど今頃は、緊急事態宣言下で登校が止まっていた時期でした。当然、その後の授業は大きく遅れるので、教科書を最後までやり切るなんて、もはや無理ゲーの領域でした。
そして、タイミングの悪いことに、今回の教科書改訂。
「ゾルバの約束」は巻末の付録にすぎないので、新しい教科書では消えてしまうだろう、という辛い予想は立っていました。それなのに、最後まで授業をする機会は訪れませんでした。
☆ ☆ ☆
新学期に入り、ピカピカの新しい教科書と対面しました。
最初に手に取ったのは、中2の英語の教科書(笑)
もちろん、そこに黒猫の姿はありませんでした。
何となく厚くなったように感じる教科書をめくりながら、ボリュームアップ度合いを確認していきました。
その作業をしながら、私は心の中で静かにゾルバとお別れしました。(続く)