― 2014年2月28日

「ダメでしたーーっ!ごめんなさーーいっ!」

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覚えているでしょうか?

3年前、当塾の花形キャラだった“立ち勉”のK君とYさんのことを。

私立高校入試において、飛ぶ鳥を落とす快進撃を続けた立ち勉のK君は、そのまま都立の難関高校に合格。周りを騒然とさせました。

しかし同日、“もう一人”の立ち勉の立役者であるYさんに、勝利の女神は、残酷な気まぐれを起こしていました。

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「こんなに机に向かえる生徒は、今まで見たことがない!」

2013年6月、教室スタッフの誰もが、Yさんの勉強姿勢に感心していました。

「なにーーっ!長時間座って腰が痛いから、立ちながら勉強したいだと!」

これが、Yさんの立ち勉の起源です。(K君は、眠気を抑えるためでした)

明るく、ハキハキしていて、努力することを全く嫌がらない。おまけに、講師を笑わせるツボも心得ていた彼女は、教室に欠かせないムードメーカーとなっていました。

夏にウェブサイトを立ち上げた時には、積極的に素材を提供してくれました。手書きのイラストは、ほとんど彼女の作品です。

当塾に在籍していない“お友達”の作品まで、いただきました。(→)

早い時期から、私とエンちゃんの間では、

「今年度の合格体験談のトップを飾るのは、間違いなくYさんだね!」

そう決めていました。

「こんなに机に向かえる生徒を、第1志望に合格させられない塾講師がいたら、その人は詐欺師だよ。」

そう思えてなりませんでした。ボーダー上ではありましたが、勝利を疑いませんでした。

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2014年2月28日

私は、詐欺師だったことを思い知らされました。

「熱意ある学生が報われない社会なんて、もう、犬の餌にでもなっちまえよー!」

自らの不甲斐なさを棚に上げ、怒りのやり場を探すことしかできませんでした。

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高校生になっても、彼女の勉強に対する姿勢は、変わりませんでした。

学年が上がって部活を引退してからは、私の出勤時刻よりも早く教室に来て、自習を始めていることもありました。

「勝利の女神さんよ!彼女のことをきちんと見ていますか?」

私は心の中で、何度も悪態をつきました。

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歳月は流れ ―

紅白歌合戦にピコ太郎が登場してから2週間後、彼女は初めての大学入試となるセンター試験を迎えました。

何としても、3年前のリベンジを果たしてほしい!

教室の誰もが、そう祈りました。

「努力に勝る天才なし」

彼女は一番緊張する最初の科目で、なんと、満点というキックオフを成し遂げていました。

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ちょうど1カ月後の“その日”の朝は、偶然にも「笑ってしまうほど、空に雲ひとつない大快晴」だったことを覚えています。

午前9時35分。エンちゃんの待機する教室に、3年間待ち続けた電話が鳴り響きました。

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勉強というものは、諸刃の剣です。

成功した時の喜び、達成感は何物にも代えがたいものがあります。心を支える武器となり、持ち主の人生を切り開いてくれることでしょう。

しかし、ちょっとしたボタンの掛け違いで、持ち主に刃を向けてきます。

悲しいのは、刃を向けられてしまった人間のほとんどが、勉強から距離を置き始めてしまうこと。

「これ以上、傷つきたくない」という防衛本能が働いてしまうのです。

中学、高校、大学入試というイベントにおいて、毎年多くの若者たちが、この刃で怪我を負い、そして、静かに勉強から離れていきます。この現状は、正直、いたたまれません。

世間一般において先生と呼ばれる方々は、この刃で切られた経験って、おありでしょうか?

もちろん、おありだとは思いますが、おそらく“かすり傷”程度だったはず。もし深手を負っていたならば、間違いなく、勉強から距離を置いたことでしょう。先生には、なっていないはずです。

だから私は、先生と呼ばれる人間の最初の仕事は、この刃の切れ味を知ることだと思っています。

彼女は3年前、不運にも、勝利の女神の気まぐれに遭遇しました。

間違いなく、大きな傷を負ったはずです。それでも、安全地帯に身を寄せることなく、自らに刃を向けた剣を再び手に取り、前へ進み続けました。

彼女は、勉強で傷ついた人の心を、身をもって理解しているのです。

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私とエンちゃんは、彼女に“二つの依頼”をしました。

一つ目はもちろん、3年前に依頼できなかった合格体験談。

この瞬間の到来を、心から待ち望んでいました。

そして、もう一つ。

それは…

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:「はい、新〇学問題集。この業界では、もう定番中の定番テキスト。」

:「予習は大切だよ。必ず自分の勉強にもなるからね。」

:「今日からエンちゃんは、君の先生ではない。ボスだ!」

:「高校生の英語を担当したくなったら、私を刺しなさい…」

 

彼女がこれまで自習で使っていた机は、桜が咲く頃には、彼女の講師机となっているでしょう。