鏡の国のおじさん
25日から、夏期講習が始まります。
ふと数えてみたら、今回でちょうど10回目。
開校して10年目ですので、当たり前といえば当たり前ですが。
☆ ☆ ☆
すでにエンちゃんから、大学生になったら講師として搾取されるように命じられている“中学2年生”のH君。
当塾で初となる➡英検合格体験談を書いた逸材ですが、そんな栄光にあぐらをかく様子は全く見せません。
簡単に思われる問題に取り組む際も、全力投球です。その真摯な姿勢には感動さえ覚えます。
丸付けの時、
H君(真剣なまなざしでテキストを手渡ししながら):「お願いします!」
ある和訳の問題で、
H君の解答抜粋 ― 彼は夜10時に寝て、翌朝6時に寝た。
小池:「豪華な二度寝だね~。」
H君:「あ“っ。」
弘法も筆の誤り、とはよく言ったものです。
☆ ☆ ☆
小池:「あ、そのままでいいよ。」
生徒が私に教材を渡そうとしたり、見やすいように教材を逆さまにすると、伝える言葉です。入塾して間もない生徒に伝えることが多い気がします。
授業中は当たり前ですが、私は生徒と正対しています。学校の教室風景を思い浮かべていただければ、分かりやすいと思います。
当然、私の方から見ると、生徒の教材は逆さまに映っています。
手元に同じ教材がある時は問題ありませんが、学校のオリジナル教材や模試等の場合は、その場で現物とにらめっこしながら説明を行うことになります。
そんな時、なるべく私は正対したまま、生徒の手元に現物を残した状態で文字を読むようにしています。つまり、逆さまから読んでいます。
この方が生徒にとって手間が省け、説明も聞きやすいからです。もちろん、板書は逆さまではありません(笑)
この仕事をして20年以上経ちますが、気が付けば、逆さまで文字を追いかけている時間の方が、私の人生の中では多くなってきたように思えます。
もちろん、プライベートで文章を読む時は、正面からです(当たり前だ)
ただ近頃は、鏡の国の中から文字を眺めている時の方が、気持ちが落ち着いているようにも感じられます。
世間で言うところの、いわゆる“職業病”なのかもしれません。
数日前までは、「こんな特技、直接社会の役に立たないし、無意味な職業病だよ。」と、自虐ネタにして生徒に語っていました。
先日7月20日、自身の誕生日を自覚した時、「おそらく、もう人生の折り返し地点は過ぎてしまったな。」という意識が、ふと頭をよぎりました。
その瞬間から不思議なもので、社会の役に立ちそうにない“この特技”が、
「20年以上の歳月をかけて、生徒から頂いた宝物なんだよ」と、
言えそうな気がしてきました。
明日、そんな宝物と共に、10回目となる夏期講習を迎えたいと思います。