最後のジャム生(2)
(前回の続きです)
もちろん、彼女自身は「女王様」とか「ドS」ではありません。
ただ、私の方が崇めずにはいられなかっただけのことです。
「もしも、彼女が授業をしたら、一体どんな感じになるんだろう?絶対に、楽しいんだろうなあ。」
「卒業生になったら、是非スタッフとして搾取されてほしい生徒を喜ばしてほしい。」
私がそんな妄想にふけるようになるのは、もはや時間の問題でした。
もちろん、エンちゃんも同じでした。
我々は、すでに彼女が中学生の頃から、将来スタッフとして働いている姿を思い描いていました。
しかしある時、ふと彼女の口から聞こえた言葉は、その望みを絶つものでした。
彼女が目指そうとしていた大学は、東京にはなかったのです。西へ500キロ以上離れた場所にありました。
残念ながら、「まゆ様」の講師姿を拝むことは、早くも夢と終わってしまいました。
☆ ☆ ☆
時は流れて、
2019年2月中旬、国立大学の二次試験まで、あと10日余りの頃…(流れすぎだろ)
彼女はすでに、第二志望の私立大学にしっかりと合格を決めていました。
ふと思ったのは、これが東京都内にある大学であるということ。
「どーして、今まで気付かなかったんだ!これって、」
授業終了後、エンちゃんが不謹慎極まりないことを承知の上で、
「万が一、東京の大学に行くことになったら…」
と、我々の素直な想いを彼女に伝えました。
「ぜひ!」と彼女が笑顔で答えてくれた時、どんなに嬉しかったことか。
しかし、これが大きなジレンマの始まりとなりました。
(続く)